「エコ」社会が日本をダメにする

武田邦彦氏の本。安易な「エコ」に警鐘を鳴らしている方で以前から注目していたが、本を読んだのは今回が初めて。内容はまともで納得できる。わかりやすい。
何より、次世代に正しい現状認識を与えようという意気込みと、未来に希望を持って生きて欲しいという強いメッセージを感じた。こういう気骨のある学者さんにはいつまでも現役で居て欲しい。
私は大学時代に環境問題を少しかじっていたのだが、そのとき、最初にこういう先生に出会っていればよかったとつくづく思ってしまう。環境問題に関心のある全ての人に読んで欲しい。

【メモ】

  1. IPCC気候変動に関する政府間パネル)では、大雑把に言うと今後100年で3℃程度気温が上がると報告されている。
  2. 今後100年のスパンで考えると、IPCCの報告どおりに温暖化しても日本での生活はまったく問題ない。むしろ楽になる。
  3. 地球の気候は温暖と寒冷を循環していて、今後長期的には、寒冷期に入っていくことが予想される。著者の信頼する国際的に実績ある学者たちは、同様の見解である。どちらかというと温暖化よりも寒冷化に備えるべき。
  4. 南極の気温には今のところ変化がなく、氷は解けていない。
  5. 北極の氷が解けたとしても、それによって海水面が上昇することはない(アルキメデスの原理)。
  6. 太陽電池の研究は40年ほど前から国(NEDOなど)が力をいれて大規模に進めてきた。著者いわく、30年も研究開発してまだ補助金を要する工業製品は、ものになったことがないらしい。
  7. 太陽電池が大量生産して安くなるなら、なぜメーカー自前で銀行から金を借りて工場建設しないのか。なぜ補助金が必要なのか。著者いわくこれがそもそもおかしい。
  8. ダイオキシンは架空の猛毒として仕立て上げられた。ダイオキシンで何か重病になった患者は今のところ国内に存在しない。
  9. 温暖化よりも、日本にとっては「食料」と「エネルギー」の防衛が重要課題だ。しかし実質的に世界の海運秩序を守っているのは米海軍であり、自衛隊はいまのままではそれらの資源の防衛に十分な力を発揮できない。