終身雇用について

就職活動の季節だ。この季節、私はいつも「終身雇用なんてうそっぱちだ」と気づいたときのことを思い出す。


私は、高校生のころは、日本の会社は「終身雇用」だと思っていた。大学に入ってもしばらくはそう思っていた。けれど、いつだったか、たぶん中小企業白書を読んでいるときだったと思うのだが、多くの産業で平均勤続年数が10年程度だという事実を知って「なんだこの数字は。新聞でよく見かける日本型の終身雇用ってのは、ありゃ何なんだ?」と大いに疑問を感じたことがあった。マスコミの報道や新聞に書いてあることとは全然違う事実が、政府の統計で示されているのだからビックリしたのである。


このデータを知って「やっぱり大企業だけが選択肢じゃないな。そもそも終身雇用なんてウソなんだし」と確信したことが、その後の私の進路に大きく影響した。


いくつかデータを示す。当時読んだ書籍が本当に中小企業白書だったかどうかはもうわからないけれど、WEB上にいくらでも資料がある。


分かり易いものとして、2009年のNIRAの報告書「終身雇用という幻想を捨てよ」というものがある。
http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n090406_330.html#
ここに示されたデータによれば、学校を卒業した後、ひとつの会社に勤め続けているのは労働者のうち約3割でしかない。ただしこのデータは1990年以降の統計だから、これだけだと1980年代はどうだったんだ?と疑問を持ってしまう。


そこで、「労働統計データ検索システム」を利用する。
http://stat.jil.go.jp/
このWEBサイトでは、労働統計を任意の組み合わせでグラフにして取り出すことが出来る。
ここで、例えば1982年における「男性 生産労働者 平均勤続年数」を取り出してみると、業種別で一番長い鉄鋼業でも15.7年。その他、鉱業11.9年、製造業11.7年などの数字が並ぶ。もちろん平均でしかないから、データの分布状況まではわからない。だけど、終身雇用にほど遠いことには間違いがない。


これが事実だ。そもそも、1社に勤め続けるのは労働人口の3割程度。30年前の平均勤続年数からみても、終身雇用されている人は決して多くない。これら実態を無視して「終身雇用は日本型経営の特徴」と言ってしまうことは、間違っていると思う。


誤解のないように表現するなら「正社員の解雇が非常に難しい法制度や社会風土が日本には存在している」ということでしかない。


日本において、終身雇用は決して一般的ではない。