日本の少子化と人口減少について、色々と情報があふれている。
私が読んで「なるほど」と感心した論文と書籍を書き留めておきたい。合計2つある。
埼玉大学経済学部 柳沢研究室のWEB
「日本の人口問題:50年前の人口爆発」
http://takamatsu.cool.ne.jp/yanagisawa/works/population.html
このレポートで初めて知った情報がかなりたくさんある。その一部を書いておく。驚きだったのは、太平洋戦争の直後から既に人口抑制の議論が行われており官民あげて産児制限に取り組んでいたということと、1950年ごろの人口予測がかなりでたらめだったということだ。
- 1948年、朝日新聞の予測では1965年前後で人口が約8700万人でピークに達し、以後減少しつづけると推定されていたこと。そして昭和100年(西暦2025年) には、人口が5000万人になると予想されていたこと。
- 1949年、当時の厚生大臣が「現在の人口増加状態がこのまま放置されていたら日本の将来の復興にとって由々しき問題となる」と発言していたこと。このとき、アメリカ家庭の平均子供数にならって、子供数を2.5人程度にすべきことが主張されていたこと。
- 1954年に厚生省人口問題研究所の館という人が、結婚年齢の変化や出産年齢層の変化などから出生率の低下傾向が続き出生減退が起きることを、すでに予測していること。
もうひとつは、この本。元大蔵官僚の学者が書いた本だ。
- 作者: 松谷明彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/11/03
- メディア: 文庫
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日本の人口減少が不可避であることをデータに基づいて分かりやすく主張している。とても勉強になった。この本の中で「日本の急激な少子高齢化は、戦後の政策的な人口増加抑制によってもたらされた。他の戦争当事者国ではそのようなことをしなかった。だから日本の少子高齢化は他と比較したときに類をみないほど急激なのだ」という趣旨のことが書いてある。これが私にはビックリだった。私は、日本の少子高齢化は、戦後のベビーブームによって自然発生したものだと思いこんでいた。でも実は当時の政策が関係していたとは・・・。
ただ、この本にはその「人口増加抑制」の動きについて具体的な記述がなかったため、一体どんなことがあったのかをWEBでしつこく調べていて、それでたどり着いたのが上述の研究室だった。
この2つの情報はとても勉強になった。人口のことは、日本で仕事をするにも、世界に出て行くにも、将来を考える上でベースとなる重要な情報なのだが、人口のことを検討し判断するための材料が、これまで私の手元にはなかった。その意味で貴重なデータを与えてくれた(経済学をしっかり学んだ人には当たり前のことなのかもしれませんが・・・)。
蛇足:
少子化と人口減少に関しては、雑誌や新聞の1000〜2000字程度の記事を読んだだけでは理解することが難しい。でもなぜか雑誌や新聞には「この本を読め」とか「このWEBを参照のこと」といった記載がない。かつて私もそうだったけれど、知識・経験の足りない読者を無意識に騙してしまうのが新聞をはじめとするマスメディアの問題だと思う。もちろん「新聞に載る情報なんてほんの一部でしかない」と最初から分かっていればすむ話だけれど、なかなか、自力でそれに気づくのは難しいし、そういうことをきっちり教えてくれる大人は少ない。